自費出版の一番の目的は「自分の想いや歴史を形に遺す」こと
――近年、ネット環境が充実して、電子書籍の普及などにより本離れ、本が売れない時代となっていますが、その中で自費出版の位置づけ、役割はどんなものでしょうか
- 加藤
-
自費出版の一番の目的は「自分の想いや歴史を形に遺す」ことではないでしょうか。
もちろん電子書籍による自費出版も一つの手法ではあります。けれど「遺す(後世に伝える)」という目的においては、日々刷新される情報の中でいつしか埋もれ、消えていく可能性は否めません。「本」という物体だからこそ後世に遺っていくことは、現存する様々な古書が証明しています。
本離れはインターネットの普及という理由だけではないでしょうね。余暇を楽しむ方法に読書以外の選択肢が増えたため、と私は思います。知的好奇心を満たすためにはインターネットも書籍も両方利用するというのが現代かと。
「自費出版」は“本離れ”とは異なる次元に位置していますので、表現の自由が確約されている限り「文化」として消えることはないと考えています。
――『自費出版』というワードから感じるイメージとして、作成するにはお金がかかる、しっかりした文章力がないとダメ、高齢者の方が多いなど少しマイナスのイメージがあるのですが、お問い合せいただくお客様はどのようなご質問が多いですか
- 加藤
-
一番多いのはやはり「費用」に対するお問い合わせです。その次は「著述」に関するものでしょうか。
自費出版のイメージの多くは「ハードカバーで立派な本」。そしてお客様の心配は「そんな立派な本に文章力が追いついていかれない」「高額な料金を請求されるかも知れない」。逆に超プラス思考の方は「印税でひと儲け」(笑)。
本の製作費用は「最低限必要な資材と作業の料金」を除けば、かなりアバウトではあります。例えば〈お客様がご自身で組版をして、校正の必要がない完全データでのご入稿の場合〉と〈記述があまり得意でないお客様には、取材中のお話を録音してリライトしたうえで組版、校正を複数回した場合〉という条件の差だけても大幅に費用が異なりますし、そこにモノクロかカラーかなどの刷色の数 印刷用紙 ページ数 部数 製本方法の条件が加わると、その組み合わせ次第で費用の差は複雑に変化します。お客様のご予算に合わせた仕様 製作 製本方法を提案するのもアドバイザーの役割といえるでしょう。
余談ですが「実は本は1冊から作ることができるのです」という話をさせていただくと皆さん非常に驚かれます。
――自費出版アドバイザーの方は、どんな相談、アドバイスをしてくれますか
- 加藤
-
上記でもお答えしましたように、ご予算に合わせた本づくりの提案はもちろんのこと、ご入稿いただいた原稿の整理と内容のチェックをしたうえで、記述の統一や禁止用語についてのアドバイス、引用 参考文献の取り扱い方法、著作権侵害の回避方法などをアドバイスしています。また、著作権については、著作者である新聞社や著作権協会、JASRACなどへの申請手続きの代行もしています。
――若年層向けなどの本づくりには、どんなものがありますか
- 加藤
-
写真がメインの、例えばブログ内にアップした料理のレシピや手芸品を1冊の本にまとめたもの、お子さんの成長の記録など、手軽に作成できる本をおすすめします。本のサイズについては、小部数ならばメモ帳サイズの可愛らしいものからA3判サイズまで、お客様のご希望に合わせて対応させていただいています。
そろそろ下火かも知れませんが、ZINEの製作もいかがでしょうか。
ご両親へのプレゼントとして1冊だけの「2XXX年 ○○家のできごと」というのも楽しいかも知れません。